株やFXと比較して、日経225先物は知名度が低く「え?先物?なんか怖そう?」と敬遠されてしまいがちです。
「先物」というと嘘か誠か「小豆相場で大損した人の話」をよく耳にするように「先物」という言葉のイメージだけで「怖い」と思ってしまう人が多いように思います。
そこで、日経225先物とはどんな取引なのか、「本当に怖いのか?」を初心者にも分かりやすく解説してみました。
日経平均株価とは?
日経225先物の話に入っていく前に、日経平均株価についてさらっと解説をしておきます。
日経平均採用銘柄は、日本経済新聞社によって日本を代表する企業として225銘柄が指定されています。
この225銘柄は定期的に見直され、組み替えられています。
日経平均の計算方法は、基本的には225銘柄の株価の合計を銘柄数で割った単純平均で出すというのが基本的な考え方なのですが、225銘柄の中には額面が1万円を超える銘柄から100円台の銘柄もあるので単純に計算してしまうと不都合が出てくることから「みなし額面」を設定して株価を計算します。
「みなし額面」は大半の銘柄は50円に設定されていますが、NEC、三菱自動車、JR東日本など500円に設定されている銘柄もあります。
見なし額面が50円の銘柄はそのまま計算し、500円の銘柄は株価÷10として計算します。
例えば、値がさ株(額面が高い)で有名なファーストリテイリングなどは2018年の8月現在の株価が48,960円で取引されており、みなし額面は50円なのでそのまま計算します。
ファーストリテイリングは1日で1,000円から3,000円ぐらい上下することもあり、1銘柄の変動で日経平均株価に大きな影響を与えます。
このように日経225採用銘柄の値がさ株が大きく動くだけで、日経平均株価もかなり大きく動いてしまう歪みがあることから、度々問題視をされています。
日経225先物とは?
日経225先物取引は、株式市場に上場している中から選び出された225銘柄の株価指数を原資産とする「株価指数先物取引」で、日本取引所グループの「大阪取引所」に上場されています。
参考:JPX日本取引所グループ
「株価指数」から派生した金融商品なのでデリバティブとも呼ばれますが「日経平均株価指数」という実体のないものを取引するうえで、担保として1枚あたりに定められた「証拠金」を差し入れる必要があります。
そして日経225先物の売買は、決済の時に発生した損益の部分のみを受け渡す「差金決済」での取引となります。
日経225先物は、ある特定の企業に投資を行っているのではなく、あくまで「株価指数」に投資をしているので、会社の不祥事、スキャンダルでの暴落、企業の倒産や上場廃止などにより株式の価値がゼロ同然になってしまうというリスクが無いのが良いところです。
また、株のように約4,000もの銘柄から投資対象を絞り込む手間がなく分かりやすいというのもメリットです。
株式投資では、信用取引口座を開設しない限り、「買い」からでないと取引することはできませんが、日経225先物取引では、今後、株価が下落すると予想できるのであれば、「売り」から入ることもできるので、相場の上昇局面でも下落局面でも稼ぐことが出来るということになります。
日経225先物取引のメリット・デメリットについての詳しい解説記事はこちらをお読みください。
日経225先物の取引時間は?
日経225先物取引の取引時間は月曜から金曜の平日のみ(土日祝は休場)
- 日中立会(デイセッション):8時45分~15時15分
- 夜間立会(ナイトセッション):16時30分~5時30分
株と比較すると取引時間が長いため、サラリーマンでも帰宅してから日経225先物の短期トレードをすることも可能です。
日経225先物の取引限月とは?
日経225先物には取引限月といって取引できる期間があらかじめ定められています。
- 日経225先物ラージ:3月限、6月限、9月限、12月限(それぞれ3ヶ月間)
- 日経225先物ミニ:毎月(各1ヶ月間)
各限月の取引最終日(第2金曜日)を「SQ」(スペシャルクォーテーション)と呼び、SQまで保有中のポジションは最終日のクローズと同時に「SQ精算値」で強制的に決済されます。
日経225先物ミニは12の限月の取引が可能になっていますが、最も活発に取引があり、値板が厚く流動性が高いのはラージと同じ3月、6月、9月、12月限となっています。
基本的に日経225先物のミニを取引する場合も、3月、6月、9月、12月限を取引するのが良いでしょう。
日経225先物の値洗いとは?
日経225先物の大きな特徴の1つとして、保有しているポジションに対して、毎日15:15分にデイセッションがクローズするタイミングで含み益、含み損を清算する「値洗い(ねあらい)」が行われます。
株やFXのようにポジションの含み益を含み益のまま、含み損を含み損のままにしてホールドするということができません。
株のように予想と逆に動いたからと言って塩漬けにしてしまうと毎日清算されるため証拠金がどんどん減少していきます。
予想と違う方向に動いたと思ったら早めの損切り、ロスカットを徹底するようにして下さい。
日経225先物の場合、「高いレバレッジ」、「値洗い」、「限月」という仕組みがあるため長期投資というよりもポジションを取ったその日のうちに決済するデイトレや、数日間保有するスイングトレード向きの金融商品となっています。
日経225先物の追証(おいしょう)と強制決済について
日経225先物は証拠金取引なので、買いや売りのポジションを取るのに証拠金が必要です。
ポジションを建ててから日経平均が逆に動いて差し入れた証拠金がポジション維持に必要な「必要証拠金」を下回ったとき、その差額が「追証」となります。
「追証」になった場合、証券会社から「追加保証金」の入金を求められますので、速やかに入金が必要です。
証券会社から指定された期日までに追加保証金を入金できない場合は、現在保有しているポジションが強制決済されますのでその点は十分にご注意ください。
例えば、SBI証券の先物オプション口座に100,000円を入金して、日経225先物ミニ1枚の買いポジションを建てました。
日経225先物ミニ1枚に必要な証拠金は2018年12月現在、72,000円なので、余裕証拠金は100,000円-72,000円で28,000円です。
この余裕証拠金の28,000円分が含み損になってマイナスにならない限りは「追証」とはなりません。
日経225先物ミニ1枚は日経平均が100円の変動で10,000円の損益となるため、上記のケースでは日経平均が買いポジションを建てた価格から280円下落するまでは追証にはなりません。
日経平均の下落が280円を超えた時点で「追証」となり、不足分を入金できなければミニ1枚の買いポジションは強制決済されます。
もし、最初に預け入れる証拠金が200,000円だった場合はどうなるでしょうか?
余裕証拠金は200,000円-72,000円で128,000円です。
日経平均が買いポジションを建てた価格から1,280円下落するまでは追証にはなりません。
「追証」や「強制決済」を避けるためには「証拠金に余裕を持つ」ことと、思惑と違ったときには「早めの損切りの徹底」によるリスクコントロールが重要となります。
日経225先物ラージの必要証拠金とレバレッジについて
日経225先物のラージは1枚あたり日経平均株価指数の1,000倍の金額を動かすことができます。
ラージ1枚あたりに必要な証拠金は1680,000円(SBI証券/2021年2月現在)です。
直近の日経平均株価指数が30,500円なので1,000倍をかける3,050万円になります。
168万円で3,050万円相当の取引をすることになるのでレバレッジは約18.1倍となります。(レバレッジはボラティリティによって変動します)
日経225先物のラージの呼値(ティック)は10円で、値動きは10円刻みでの変動となります。
日経平均株価指数の10円の変動でラージ1枚あたり1万円の損益が発生するため、1日に何度も10円の値幅を取ることを繰り返す「10円抜き」というスタイルが短期トレーダーに人気です。
ただ、上に記載した取引証拠金はSBI証券のもので各証券会社によって必要な証拠金額は毎週変動するので注意が必要です。
毎週、日本証券クリアリング機構が1週間の相場のボラティリティを考慮して日経225先物1枚あたりのSPAN証拠金額を算出します。
1週間のボラティリティが高かった場合はSPAN証拠金額は高くなり、ボラティリティが低かった場合はSPAN証拠金額も低くなります。
そのSPAN証拠金額に各証券会社が設定する掛け目を計算して、日経225先物ラージ1枚あたりに必要な証拠金を決定する仕組みになっていします。
例えば、2022年2月現在の日経225先物ラージ1枚あたりのSPAN証拠金額は1,680,000円です。
この金額に各社が独自に設定する掛け目を計算すると以下のようになります。
- SBI証券(HYPER先物口座):1,680,000円×0.5倍=840,000円
- SBI証券:1,680,000円×1倍=1,680,000円
- 松井証券(一日先物取引):1,680,000円×0.5倍=840,000円
- 松井証券:1,680,000円×1倍=1,680,000円
- 日産証券(アクティブ):1,680,000円×0.5倍=840,000円
- 日産証券:1,680,000円×1.2倍=2,016,000円
- 岡三オンライン証券(アクティブ先物取引):1,680,000円×0.5倍=840,000円
- 岡三オンライン証券:1,680,000円×1.2倍=2,016,000円
- 楽天証券:1,680,000円×1倍=1,680,000円
- GMOクリック証券:1,680,000円×1.2倍=2,016,000円
- SBIネオトレード証券:1,680,000円×1.2倍=2,016,000円
- マネックス証券:1,680,000円×1倍=1,680,000円
※ミニの証拠金は上記の10分の1の金額になります。
証券会社と口座の種類によって1枚あたりの手数料と証拠金額が全然違ってくるので、証券会社選びはかなり重要です。
参考:日本証券クリアリング機構
会社によって必要証拠金が全然違うので証券会社選びは特に重要
日経225先物ミニの必要証拠金とレバレッジについて
日経225先物のミニはラージの10分の一で1枚あたり日経平均株価指数の100倍の金額を動かすことができます。
必要な証拠金もラージの10分の1となっており、1枚あたりに必要な証拠金は168,000円(SBI証券/2021年2月現在)となっています。
日経225先物のミニのレバレッジはラージ同様に約18.8倍で、呼値(ティック)は5円となっており、値動きは5円刻みでの変動となります。
なお、日経225先物のレバレッジはボラティリティによって変動します。
相場のボラティリティが高くなると1枚あたりに必要な証拠金が上昇し、ボラティリティが低くなると1枚あたりに必要な証拠金は減少します。
1枚当たりの証拠金の増減によって、ボラティリティが高くなると相対的に最大レバレッジは減少し、ボラティリティが低くなると最大レバレッジは上昇するということになります。
日経平均株価指数の5円の変動でミニ1枚あたり500円の損益が発生します。
日経225先物ミニは1枚あたりに必要な証拠金が少ないため個人投資家に人気が高く、1日に何度も5円~10円の値幅を取ることを繰り返す「5円抜き」「10円抜き」というスタイルが短期トレーダーに人気です。
日経225先物の証券会社ごとの手数料の比較
日経225先物取引の取引手数料は、ミニとラージによって異なり、さらに証券会社ごとに手数料の違いがあります。
価格は税抜き表示です。
証券会社 | 日経225ミニ手数料(枚) | 日経225ラージ手数料(枚) |
---|---|---|
SBI証券 | 40円 | 400円 |
松井証券 | 40円 | 300円 |
松井証券(アクティブ口座) | 25円 | 250円 |
日産証券 | 33円 | 230円 |
日産証券(アクティブ口座) | 23円 | 200円 |
岡三オンライン証券 | 40円 | 300円 |
岡三オンライン証券(アクティブ先物取引) | 23円 | 250円 |
楽天証券 | 38円 | 278円 |
GMOクリック証券 | 36円 | 259円 |
ライブスター証券 | 35円 | 250円 |
マネックス証券 | 50円 | 330円 |
証券会社によって手数料にかなりの違うので、取引回数、枚数が増えれば増えるほど積もり積もって差が出ます。
日産証券や岡三オンライン証券のアクティブ口座は日経225先物の手数料がぐっと低く抑えられているのでおすすめです。
日経225先物取引の必要証拠金が低く、手数料の安い証券会社を選ぶのがベストでしょう。
日経225先物のアクティブ口座について
日経225先物は相対取引(証券会社が顧客と反対のポジションを持つこと)が出来ないので、証券会社は投資家の注文を公式の取引所にそのまま流すまでの土管の役割でしかありません。
1枚あたりの取引手数料だけが収益の薄利なビジネスモデルのため、手数料収入を増やそうという意図で一部の証券会社では、近年、日経平均先物のアクティブ口座を提供する動きがあります。
日経平均先物のアクティブ口座を利用すれば1枚あたりに必要な証拠金が半分になり、実効レバレッジが約36倍(※時期により変動があります)での取引が可能となります。
そのかわり、アクティブ口座で建てたポジションは日中なら日中のセッション内でしか保有できず、同様にナイトセッションで建てたポジションはナイトセッション内で決済する必要があります。
実効レバレッジが36倍という非常に高い資金効率のためデイトレーダー、5円抜き、10円抜きを細かく狙うスキャルパーに人気となっています。
ただ、高いレバレッジは保有するポジションと逆に動いた場合の損失も大きくなる「諸刃の剣」なので、資金管理には十分に注意をする必要があります。
日経平均先物のアクティブ口座を開設できる証券会社は以下の4社となっています。
日経平均先物は店頭FXと違い、相対取引(証券会社が顧客と反対のポジションを持つこと)ができないので、証券会社は顧客の売買の取引手数料からの収益が主となります。
そのため顧客と証券会社との間で利益相反が無く、FXで横行する証券会社のストップ狩りや約定価格の大幅なすべり等が発生しません。
利益相反が無いということで、国内のFX会社と違っていくらスキャルピングをしても口座を凍結されてしまうというようなことはなく、むしろ証券会社側の手数料収入が増えるという点で歓迎されるので短期トレーダーにとっては大きな安心材料と言えるでしょう。
なお、アクティブ口座を利用している場合、日経225オプションの取引はできませんのでその点はご注意ください。
日経225先物のアクティブ口座の約36倍レバレッジは魅力
日経225先物のおすすめのチャートツールとは?
マネックス証券のトレードステーション(サービス終了)
【2020年5月追記】※マネックス証券のトレードステーションは2020年8月7日で終了いたしました。
公式発表については以下のマネックス証券のページをご確認ください。
参考:トレードステーション日本株のサービス終了について(マネックス証券)
日本の証券会社が提供している日経225先物のチャートツールは機能やテクニカル指標が少なく、FXでは必須とも言えるメタトレーダー4(MT4)を知ってしまった後だと使い勝手の面で不満しか残りません。
MT4は海外市場の日経225CFDのチャートしか表示させることができないので、大阪取引所(OSE)の日経225先物とは実際の価格にズレがあり、短期のトレードには不向きです。
そんな中で、国内の証券会社の中でも、最も高機能なのがマネックス証券のトレードステーションです。
トレードステーションは東証の日経225先物ラージ(@OSENK)と、SGX日経225先物(@SGXNK)、CME日経225先物(@NIY)のチャートを表示させることが可能です。
無料で使えてプログラムによるシステムトレードにも対応しており、100種類以上のテクニカル指標が使えるので機能面で充実しています。
しかし、トレードステーションはなぜか日経225先物ミニのチャートを表示することができないので、この部分は早急に改善してもらいたいポイントです。
日経225先物のチャートツールは有料でいいならTradingviewが最強!
Tradingview(トレーディングビュー)が2018年の4月から大阪取引所の日経225先物のリアルタイムチャート表示に対応しました(月額1ドルの追加データでの対応)
TradingviewはHTML5のブラウザベースのチャートツールで、MT4なみにカスタマイズの自由度が高く、高機能なインジケーターやチャート分析機能があります。
ブラウザ上で動作するのでパソコンが不要で、ipadやAndroidタブレットなどでも使用可能です。
もちろんスマホでも動きますが、画面サイズ的にちょっと本格的な分析にはちょっと厳しいかなと思います。
使用するインジケーターによってチャート画面はガラッと変わります。
Tradingview(トレーディングビュー)は無料のプランもありますが、無料でできることはかなり少なく、最低でもProプラン以上をおすすめします。
Proプランで大阪取引所の日経225先物のリアルタイムチャートを表示させたい場合は月額1$の追加データが必要です(海外の日経225CFDは追加データ不要で表示できます)
また、Tradingviewを単月契約から2年契約に変更すると割引が効くので月額料金を14.95$から9.95$まで安くすることが可能です。
仮にTradingviewの2年契約だとすると月額1,215円で大阪取引所の日経225先物のリアルタイムチャートを表示できます。
管理人も日経225先物のトレードにはTradingviewを使っており、もはや手放さない必須のツールになっていますのでおすすめです。
MT4とトレードステーション、Tradingviewを比較した詳細な記事は以下をお読み下さい。
日経225先物の税金と確定申告について
日経225先物の場合、国税庁が定める「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」により申告分離課税として税率は一律20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)となります。
※平成25年から平成49年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則として、その年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することになります。
日経225先物では株式のように「源泉徴収ありの特定口座」を利用できませんので、先物で利益が出た場合は確定申告が必要となります。
なお、先物取引の損益は、国内のオプション取引、FX(取引所取引、店頭デリバティブ取引)等の損益通算が可能ですが、株式取引、投資信託、海外市場におけるデリバティブ取引等の損益通算はできないので注意が必要です。
株と日経225先物の税率は同じ。確定申告の方法は違う
まとめ
日経225先物は流動性も高く、FXのように店頭取引(相対取引)ではなく公的な取引所で売買される金融商品なので透明性が高いのが特徴の1つです。
相対取引が無いということは、証券会社が顧客と反対のポジションを持つ(呑み行為)が無いため証券会社と顧客の間に利益相反がありません。
よって証券会社によるストップ狩りや不正なレート操作などが一切無くフェアな取引が可能となっています。
仕組みが分かってしまえば「日経225先物取引」もFXと共通点も多く、怖いものではなく取り組みやすいということが分かると思います。
資金管理には十分に注意する必要はありますが、日経225先物なら高いレバレッジを効かせて短期間で大きく稼ぐということも可能です。
日経225先物のトレード手法については以下の記事をお読み下さい。
株、FXと日経225先物の詳しい比較については以下の記事をお読みください。
日経225のオプション取引については以下の記事で解説しております。
追証にならないためには証拠金に余裕を持つことが大事